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ワンダーフォン #10
慌てて震えるワンダーフォンを手に取った。サリーからの着信があったのは、元旦の早朝、川崎堀之内のコインパーキング——つまりワンダーフォンを手に入れたばかりの時——以来だ。こちらから電話をかけることがあっても、サリーから着信をよこすことはあれからなかった。 グリーンの通話ボタンを押して電話に出た。 「もしもし?」...
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この不思議な電話にまつわる物語(それに加えて、完熟卵についての考察)は一切の推敲や辻褄合わせを行わないで文章に残している。過去に書いた<節>に文句があろうとも放っておいている。登場人物の名前が紛らわしいからという理由で置換して修正することもしていない。頭の中で思いついた事実が、過不足ある状態でそのまま表現されていると言っても過言ではない。それをある意味(僕の頭の中で起こってしまった)ノンフィクション...
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サキとは彼女の自宅近く、湘南台駅前のスーパーマーケットで待ち合わせをした。彼女は自転車で後から追いつくと言い、僕は大きなコインパーキングへ車を停めた。煙草を一本吸ってからスーパーマーケットへ向かうと、ひっきりなしに主婦的な女性かおばあちゃんが入り口を出たり入ったりしていた。時刻は午後5時になる。時計から目を上げると、待たせちゃったわねと大して悪びれてない様子でサキが手ぶらでやってきた。お礼に料理を作...
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